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年金生活者の借入れ

年金生活でも資金を借りるための日本の実務

年金だけで暮らす方が急な出費に備えるために、信用金庫の年金受給者専用ローンや公的な貸付制度、審査で断られる理由と借りずに乗り切る方法を整理しました。

年金振込通知書を見ながら家計を見直す日本の高齢の夫婦

年金だけで暮らしている人が急な出費に直面したとき、「もう誰も貸してくれない」と思い込むのは早計です。日本では年金も立派な収入として審査に数えられ、信用金庫を中心に年金受給者専用のカードローンが今も用意されています。一方で、かつて利用できた公的な年金担保貸付はすでに新規受付を終えており、借りられる額や期間は現役時代より確実に小さくなります。大切なのは、限られた選択肢の中から金利と返済期間の釣り合う商品を選ぶことです。

ここでは国民年金・厚生年金を受け取っている65歳以上の方、そして60代で繰上げ受給を始めた方を想定し、借入れの仕組み、使える商品、断られる理由、借金に頼らない資金の工面まで、年金額に即した具体例とともに解説します。

年金収入はどのように審査されるか

日本の公的年金は、全員が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員や公務員が上乗せで受け取る厚生年金の二階建てです。支給は原則として偶数月の15日に、前の2か月分がまとめて振り込まれます。この「2か月に一度の入金」は貸し手にとっても重要で、多くの年金受給者向けローンは年金の受取口座を自行・自金庫に指定してもらうことを優遇条件にしています。審査の基準になるのは、年金振込通知書や年金額改定通知書に記載された年額です。

貸金業法の総量規制は年金生活者にも等しく適用され、消費者金融などからの借入れは年金を含む年収の三分の一までに限られます。たとえば老齢基礎年金のみで年額80万円程度の人なら、上限は約26万円です。銀行や信用金庫の商品は法律上この規制の外にありますが、年金だけの人に対しては限度額を数十万円にとどめるのが一般的です。

年金を担保にした借入れはもうできない

以前は独立行政法人福祉医療機構(WAM)が年金を担保にした公的な貸付を行っていましたが、この事業は廃止が決まり、新規の申込受付は2022年3月末で終了しました。年金を受け取る権利は法律で譲渡や担保提供が禁じられているため、「年金手帳や通帳を預ければ貸す」という業者は違法です。年金の受取口座を他人に管理させる取引には、絶対に応じないでください。

年金受給者専用カードローンの実例

信用金庫の多くは、信金ギャランティの保証を付けた年金受給者専用カードローンを扱っています。東京シティ信用金庫の「しんきんシニアきゃっする」は60歳以上69歳以下の年金受給者が対象で、極度額は10万円から50万円です。金沢信用金庫の「シルバーきゃっする」も同じく契約時60歳以上69歳以下で、極度額は50万円、金利は年金の受取先によって年14.0%または年14.5%の固定とされています。いずれも営業地区内に住んでいることが条件で、70歳を過ぎると新たな借入れは止まります。

年金生活者が使える主な資金源
資金源対象の目安金額の規模注意点
信用金庫の年金受給者専用カードローン60歳以上69歳以下10万円から50万円営業地区内の居住が条件、金利は年14%前後
銀行カードローン上限69歳前後、年金のみは不可の行も数十万円程度安定収入の定義を事前に確認
消費者金融60代後半まで年収の三分の一まで利息制限法の上限に近い金利になりやすい
生活福祉資金(不動産担保型生活資金)65歳以上の低所得世帯で持ち家あり土地評価額に応じて月単位で貸付窓口は市区町村の社会福祉協議会
リバースモーゲージ55歳以上など持ち家のある人担保評価に応じる金利上昇と担保価値下落のリスク

具体例:72歳の夫婦が40万円を借りる場合

夫72歳が厚生年金と基礎年金で年額220万円、妻70歳が基礎年金で年額80万円を受け取っている世帯で、給湯器の交換と医療費のために40万円が必要になったとします。夫婦合わせて年金は年300万円ですが、ローンの審査は契約者本人の収入で行われます。信用金庫の年金受給者専用カードローンは69歳までという年齢条件があるため、72歳の夫はそもそも新規契約ができません。

この場合の現実的な道筋は三つです。第一に、銀行の目的別ローン(リフォームローンなど)で完済時年齢の上限が高い商品を探すこと。第二に、消費者金融を利用する場合は、夫の年収220万円の三分の一である約73万円が上限となり、40万円であれば枠には収まります。年18%で24回払いにすると月々の返済は約2万円、利息の総額は約8万円になります。第三に、子どもが資金を出し、親が少しずつ返す家族間の取り決めにすることです。年齢と金利を考えると、第三の方法や自治体の給付制度の確認を先に検討する価値があります。

なぜ年金受給者の申込みは断られるのか

審査を受ける前の準備

  1. 最新の年金額改定通知書と年金振込通知書を用意し、年額を正確に把握する。
  2. CICとJICCで本人開示を行い、古い延滞や解約し忘れたカードがないか確かめる。
  3. 年金の受取口座がある金融機関に、年金受給者向けの商品があるかまず相談する。
  4. 必要額を見積もり、借りるのは不足分だけにとどめる。
  5. 月々の返済額が、2か月ごとの年金入金のリズムで無理なく払えるかを確認する。
契約時に確かめておく条項

年金受給者向けカードローンの多くは3年ごとの自動更新で、更新時に保証会社が再審査を行い、限度額が減額されたりゼロになったりすることがあります。70歳前後で新規の借入れが止まる時期、契約者が亡くなった場合の残債の扱い、遅延損害金の利率は、申込前に商品説明書で確認しておきましょう。

借りる以外の選択肢

年金生活での借入れは、金利の負担が家計に長く残ります。医療費が高額になる場合は高額療養費制度の限度額適用認定を、介護費用であれば介護保険の高額介護サービス費を先に確認してください。所得が低い世帯は、社会福祉協議会の生活福祉資金で緊急小口資金などを相談できる場合があります。持ち家があるなら、不動産担保型生活資金やリバースモーゲージで自宅の価値を生活費に充てる方法もあります。すでに複数の借入れの返済に追われているなら、法テラスや日本貸金業協会の相談窓口で、任意整理など債務の整理を検討する段階かもしれません。

年金生活者のよくある質問

年金の繰上げ受給中でも借入れできますか? 繰上げで受け取っている年金も収入として扱われます。ただし減額された年金額が審査の基準になるため、借入可能額は小さくなりがちです。

遺族年金だけでも申し込めますか? 信用金庫の年金受給者向けローンは、対象とする年金の種類を商品ごとに定めています。遺族年金を対象に含むかどうかは、申込前に窓口で確認してください。

年金を受け取っている銀行を変えると有利になりますか? 年金の受取口座を指定すると金利が優遇される商品は少なくありません。ただし、口座を移す手続きには時間がかかるため、資金が必要になる前に済ませておく必要があります。

70歳を過ぎてカードローンの更新はどうなりますか? 多くの商品では70歳前後で新たな借入れが停止され、残高の返済だけが続きます。それまでに完済の見通しを立てておくことが重要です。

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